第29章 記憶
「ねぇ先生!ちょうど3時のおやつの時間だし
ポアロでお茶でもしに行かない!?」
『へっ…!?ポアロで…!?』
っ、いやいや!
あそこは安室さんがいるから出来れば行きたくない…!
私の事が気になる、という発言をされてから会ってないし
もし顔を合わせたらすごく気まずいって!
「私は江戸川くんから博士に届けてほしいものがあるって頼まれてるから、先に帰るわね。」
灰原さんはそう言ってからすぐにタクシーを捕まえて
私達の元から去ってしまい…
なんだか逃げられたように思えてならなかった。
「よし!じゃあ僕達だけで行きましょう!」
「さんせー!」
「行こうぜー!」
あぁぁぁ…
こうなったらもう断れない雰囲気…。
ポアロに向かって楽しそうに歩き出した子供達の後ろで
一度だけ大きなため息を吐き、私も彼らの後を追って歩き出した。
ポアロに到着すると私達を出迎えてくれたのは
パン教室で会った女性の店員さんで…
どうやら安室さんはいなさそうでホッとし
みんなで席に座って、注文したドリンクを飲みながら会話を楽しんだ。
すると私のスマホに江戸川くんから電話がかかってきて
みんなにも聞こえるようにスピーカー状態にして応答した。
『もしもし?江戸川くん?』
「あ、先生?今ってまだみんなと一緒?」
『うん。灰原さんは先に帰ったけど
ポアロでお茶してるところだよ。何かあった?』
「観覧車にいた時に、お姉さんが頭を押さえて
なんて言ってたのか聞きたくて…」
江戸川くんのその言葉に円谷くんが反応し
ポケットから手帳を取り出していた。
「それなら途中からですけど、ちゃんとメモしましたよ!
えーっと…"スタウト"、"アクアビット"、それと…
"リースリング"って言ってました。コナン君、
どういう意味か分かりますか?」
今のって全部お酒の名前だよね…?
まさか…本当に彼女は組織の人間なのかな…?
でも記憶を失っているのは確かなようだし…