第29章 記憶
3人で走っている所で
江戸川くんが急に立ち止まった。
『どうしたの?』
「スマホが振動して……やっぱり、あいつらからだ。」
江戸川くんのスマホには
円谷くんからの着信画面が表示されていて
電話に応答しスピーカー状態にすると、吉田さんの声が聞こえてきた。
「どうしようコナン君っ!!
観覧車に乗ってたらお姉さんの具合が悪くなっちゃったの…!
お願い…!早く助けて…!!」
『吉田さん、落ち着いて?私が救急車呼んでおくから。
彼女の様子がどんな感じなのか教えてくれる?』
「えっと…頭を押さえて苦しそうで…!
あと何かぶつぶつ言ってるみたいなんだけど意味がわからなくて…
一応光彦くんがメモしてくれてる。」
吉田さんの言葉を聞いた私は近くの従業員に声を掛けて
観覧車の中で急病人が出てしまったことを伝え、
救急車を呼んでもらうように頼んだ。
そして吉田さんとの電話を終えた江戸川くんは
知り合いの刑事さんに連絡をし
記憶喪失の女性を見つけたから、ここに来て欲しいと頼んでいた。
しばらくすると子供達と共に担架に乗せられた女性が観覧車から降りてきて医務室に運ばれた。
そしてまもなく救急車も到着し、
江戸川くんの知り合いの2人の刑事さんも一緒に医務室へ向かって行った。
「先生、コイツらと一緒に先に帰ってて。
僕は警察の人にあの女の人のこと説明してから帰るから。」
『うん…わかった。よろしくね?』
力強く頷いた江戸川くんは医務室に向かって走って行った。
「じゃあみんな、言われた通り帰りましょ?」
灰原さんがそう声を掛けても
子供達はずっと暗い顔をして俯いていた。
「でも…お姉さんが心配で…」
『吉田さん…大丈夫だよ。
あのお姉さんが元気になったらまた会えるから…
今ここに残っても何も出来ないし
みんながそんなに暗い顔してたら、あのお姉さんも悲しんじゃうよ?』
「そうですね…!
またみんなでお見舞いに行けばいいですし!」
円谷くんがそう話すと、吉田さんと小嶋くんも
少しだけ明るさを取り戻してくれた。
そして私達は電車で米花町まで帰ってきたんだけど…