第29章 記憶
しかし、みんなで医務室を出ようとしたところ
灰原さんが私たちを引き留めた。
「先生…江戸川くんも…少し話があるの…。」
『え…?』
「じゃあ、僕達は先に観覧車に…」
「ダメよ!!話が終わるまで…みんなも待ってて。」
灰原さんの様子からして、ただ事では無さそうで…
医務室を出てからベンチのある場所に向かい
私と江戸川くんと灰原さんはみんなから少し離れたところに座り
子供達と銀髪の女性は、群がってくる鳩を見てはしゃいでいるようだった。
『それで灰原さん、話って…?』
「…あの銀髪の女性……
ひょっとしたら組織の人間かもしれなくて…」
『えっ…!?あの人が!?』
「絶対にそうとは言い切れないけど
小嶋くんを助けた時のあの身のこなし…。
それにあの片方の目…まるで作り物のように見えて…」
「作り物って、まさか…!!」
驚いている江戸川くんと灰原さんに詳しく話を聞くと
この間、赤井さんから聞いた組織のNo.2である"RUM"も
片側の目が作り物の義眼らしく、あの女性は本当は…
オッドアイではないのではないかと疑っていた。
『じゃあ…記憶喪失も嘘ってこと?』
「いや…それは本当だと思う。奴等の狙いが灰原なら
わざわざそんな芝居をして近づくなんて面倒な事しないはずだ。
それに…彼女が組織の仲間で記憶喪失なら
こっちにとっても逆に都合がいい。」
江戸川くんの言葉に反応した灰原さんは
あの銀髪の女性の記憶を戻すことによって
何か組織の情報が手に入るのではないか、と考えていると疑っていた。
「もし記憶が戻ったら…私やあなた、それに先生も…
あの子達だって組織に消されてしまうかもしれないのよ!」
悲痛な声で子供達を指差した灰原さん。
私と江戸川くんもみんなの方に目を向けた…でも…
「「!?!?」」
『え!?なんでみんないないの!?』
さっきまでみんな鳩と遊んでいたのに…!!
江戸川くんは慌てて電話をかけていたようだが
子供達は誰も電話に出なかった。
「くそっ!あいつら!」
「恐らく、観覧車に行ったのね…。
あの子達すごく乗りたがっていたから。」
『うん…行きましょう!』
私達3人は走って観覧車乗り場へと向かった。