第29章 記憶
「俺と灰原があの女性の事を知ってる人がいないか探してみるから、先生はあいつらと一緒にいてあげてくれる?
放っておくと何すっか分かんねーし…」
『あはは…そうだね…私も従業員の人に聞いてみるよ。』
入り口から中に入り、江戸川くんと灰原さんと別れ
私は子供達と銀髪の女性の元へ向かった。
しかし、記憶を取り戻す手伝いをするって言ってたのに
子供達ははしゃいで遊んでばかり……。
まぁ…この女性に笑顔が戻って、明るくなってきたし
それはそれでいいのかな。
「若山先生!次は観覧車に乗ろー!」
『ふふっ、分かった分かった。』
「先生、って…?この子達の母親では…?」
『あははっ、違いますよ。
私はこの子達が通う小学校で教師をしてる
若山 美緒と申します。』
観覧車の列に並びながら自己紹介をしていると
帽子とサングラスをかけた金髪の女性が近づいてきて…
「こんな所で何をしてるの?…帰るわよ。」
…と、手すり越しに声を掛けてきた。
パッとその女性に目を向けるともうすでに歩き出していて
私達は顔を合わせて首を傾げた。
『さっきの人…お知り合いですか?』
「いえ…あなたの知り合いじゃ…?」
『私も知らない人なんですけど…』
でも……
さっきの金髪の女性の声…昔どこかで聞いたような…
思い出そうと考えていると子供達から声がかかり
私達は観覧車に乗るための通路の先へ進んだ。
徐々に上に向かって進む動く歩道から景色を眺めていると、下の通路に江戸川くんと灰原さんが歩いているのを小嶋くんが見つけた。
そして手摺から身を乗り出し声を掛けた小嶋くんは
勢いよく乗り出しすぎて手摺を超えて落下しまった。
『!!小嶋くん!!』
「ダメよ!危ないわ!!…私に任せて。」
『え……、っ!?』
私が驚いている間に、銀髪の女性は手摺を飛び越えて
建物をつたって滑り、落下した小嶋くんを空中でキャッチしていた。