第29章 記憶
赤井さんと過ごす予定が無くなった私は
自分のアパートでぼーっとテレビを見ていた。
適当につけていたバラエティ番組の画面だったけど
緊急速報のニュースを知らせる音が鳴り
画面上部に、原因不明の停電が起きていると表示されていた。
スマホでも詳しく調べてみようと思い手に取ると
スマホの画面は電話の着信画面に変わった。
そこには赤井さんの名前が表示されていて
すぐに通話ボタンを押した。
『っ、もしもし?』
「出るの早いな…俺だ。」
『赤井さん……無事だったんですね…!』
さっきの停電のニュースを見た時
なんとなくだけど赤井さんも関わっている気がしたんだ…
電話から聞こえてくる赤井さんの声はいつも通りで安心した。
「少し厄介な事件が起きた。
それが解決するまで家には帰らないと思う。」
『そうなんですか…
ちゃんと食事は取ってくださいね!』
「分かってる。美緒は明日から連休だろ?
ゆっくり休めよ。…じゃあ、仕事に戻る。」
『電話くれて…ありがとうございました。』
「ああ…おやすみ、美緒。」
1分足らずの電話だったけど…
きっと赤井さんは、私が心配している事をわかってて
わざわざ電話してきてくれたんだろう。
本当にあの人は優しいな…
どんなに忙しくても…大変な事件が起きても
いつも私のことを考えてくれる。
電話で会話をしたことで早くまた赤井さんに会いたくなったけど、不思議と今日はもう寂しくなかった。
まだ耳に赤井さんの声が残っていて…
その日の夜、私は幸せな気分のまま眠りについた。