第29章 記憶
side 赤井
今夜…組織の工作員の1人が
警察庁に侵入するかもしれないという情報を掴み、愛車のマスタングに乗り警察庁に向かった。
恐らく侵入する目的は、何かのデータを盗む為だろう。
日本の警察がその工作員を捕まえてくれればいいが…
警察庁付近の道路で路駐していると
建物から1人の女が車道に飛び出てきて
その際に止まった車を運転手から奪い逃走し
俺は車のエンジンをかけて、その車を追った。
料金所のバーを弾いて首都高に入ったその車は
次々と先行車を追い抜いている…。
そんな時、俺の車の後ろから白のRX-7が走ってきて…
それは安室くんの愛車だった。
カーブに差し掛かかった際
彼の車に近づくと俺もあの女を追っている事に気付いたようだった。
「下がれ赤井!奴は公安のモノだ!!」
鋭い目付きで睨んでくる彼を睨み返していると
前方で2台の車がぶつかり合い、そのうちの一台の軽自動車が大きく跳ね上がった。
道路に車が落下し、
車内から人が出てきたのをミラーで確認しナビに目を向けると…
「この先は…工事中で渋滞か…。」
俺は車を停車させ運転席から降り、持ってきたライフルを組み立てた。
そして車のボンネットの上で、二脚をつけたライフルを構え
スコープを覗き込んだ。
「思った通り…逆走してこちらに戻ってきたな。」
徐々に俺のいる場所へと向かってくるその車…
全く止まる様子が無く、俺を轢き殺すつもりでスピードを上げたようだった。
大きく息を吐き、指をトリガーにかけ
スコープの十時線の中心に女の額を合わせたが…
一瞬ニヤリ、と笑ったその女は
頭を下げてダッシュボードに隠れてしまった。
「っ、」
頭を狙えなくなり、仕方なく照準を運転席から右前輪のタイヤへ移し、引き金を引いた。
女の乗った車はタイヤを撃ち抜いたことによりコントロールを失い、俺の車を避けて側壁に激突した。
そのまま他の車数台と共に海の方へと落下したが
海沿いにある倉庫の上に一台の車が落下してしまい……
大きな爆発音と共に爆風が押し寄せてきて、黒煙が舞い上がった。
その様子を見ていると安室くんの車が近付いてきて停車し
運転席から降りてきて
俺と同じように立ち上がる黒煙を見下ろしていた。