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《赤井夢》Happiness{R18}

第5章 偶然




私の方をゆっくり振り返った赤井さんは
一体何の用だ、と言わんばかりの目で私を見た。


『あの…
この前のバスジャック事件の時にも助けて貰ったので…
何かお礼をさせて下さい!』

「そんなの気にしなくていい。
大した事はしていないから礼などいらん。」

『!!それでは私の気が済みません!
あ、ちょっとここで待ってて下さい!1分で戻りますから!』

「お、おい…!」

 

私は赤井さんの返事を聞かずに
持っていた買い物袋をその場に置いて走り出した。




…やってきたのは近くの自動販売機。
赤井さんが何の飲み物が好きか分からなかったから
数種類の飲み物を買って、再び彼の所に戻った。



『す、すみません…お待たせしました…っ…』

「…20秒遅れたぞ。」

『!?ごめんなさい!!あの…これ…』


 
ちゃんと秒数を数えていたことに突っ込もうかと思ったけど
それには触れず…
私は先程買った3種類の飲み物を赤井さんに差し出した。



 
『何が好きか分からなかったので好きな物とって下さい!
あ、もちろん全部持っていっても大丈夫です!
こんなお礼しか出来なくてすみません…』




1人でペラペラ喋っている私の様子を
赤井さんはポカーンとした顔で見ていた。


一通り私が話し終わったところで沈黙が流れ、
なかなか飲み物を受け取ってくれない赤井さんを見て私はハッとした。


  
『もしかして…全部嫌いでした!?
すみません、すぐに買い直してきます!』

「待て。」



飲み物を抱えたまま再び自動販売機に向かおうとしたところ
赤井さんの手が伸びてきて、ブラックの缶コーヒーを掴んでいた。




「ありがたく頂くことにしよう…
ちょうどコーヒーが飲みたかった。」





赤井さんは建物の壁に背を預け、缶コーヒーを飲み始めた。

…その仕草があまりにもカッコよくて
私はついボーッと見惚れてしまっていた。





「…お前は飲まないのか?」
『へっ!?あ…じゃあ……頂きます。』
「フッ…自分で買ったくせに何を言ってる。」


あ…


赤井さんも笑ったりするんだ。



って当たり前か。人間だもんね…
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