第27章 緋色 ✴︎
「っ、いてててて!」
「…女性に手荒な真似をするとは…感心しませんね。」
『えっ…安室さん!?』
な、何でこの人がここに…!?
目をぱちぱちさせながら驚いていると
安室さんは男性の腕を掴んでいた手を離し、私の方へと向き直った。
「美緒さん、お怪我はないですか?」
『え、えぇ…ないです。』
「そうですか…よかった。」
フッと私に笑顔を向けてくれた安室さんは
警部さん達に、来るのが遅くなってすみませんと話していた。
刑事さんの話によると
彼女のスマホの通話履歴に安室さんの番号もあったからここに呼んだらしい。
連絡をとっていた理由は
澁谷先生からストーカー被害の依頼を受けていたからだと
安室さんはみんなに説明していた。
「それで…美緒さんはなぜここに?」
安室さんにそう尋ねられて答えようとしていたら
江戸川くんがそれを遮って話に割って入ってきた。
「ねぇ若山先生!
ここには勉強会の会場の下見に来たんでしょ?
仕事しなくていいの!?」
『へっ…?あ、うん。そうだね。
じゃあ…私はこれで失礼します。』
ジョディさんや警察の方達に頭を下げて
私は職員室を出て会議室に向かった。
…さっき江戸川くん、わざと話に割り込んできたよね?
安室さんが悪い人かもしれないから
私を一緒に居させないようにしてくれたのかも…。
必死な顔をしていたから
彼の言葉に従って職員室を出たけど………
『澁谷先生…大丈夫かな…。』
心配なのは今も意識が戻らない澁谷先生のこと。
彼女を襲った犯人がちゃんと捕まりますように…
そして彼女の無事を強く願いながら
誰もいない廊下を歩いて会議室へ向かった。