第26章 授業
「美緒さん…
なぜ電話に出なかったんですか?」
『すっ、すみません…!気付かなくて…!』
声からしてやっぱり怒ってる…!
おどおどしながらそう答えると
赤井さんは私の腕をガシッと掴んで止まっている車の方へと歩き出した。
…それは何だか連行される気分で逃げ出したくなったけど
もちろんそんな事は私には出来るはずもなかった。
そして車に乗せられて着いた先は工藤邸。
家の中に入ると優作さんと有希子さんは出かけているようで誰もいなかった。
リビングに入ると同時に
昴さんの変装を解いた赤井さんが私をギュッと抱きしめて来た。
「連絡が取れなかったから…心配した。」
『え…怒っていたんじゃないんですか…?』
突然の抱擁に驚いてそう尋ねると
赤井さんは深いため息を吐いていた。
「確かにイラついていた。
でもそれは…お前が連絡を取らなかったからじゃない。」
え…?他に何かあったっけ…?
思い当たらなくて抱き締められながら首を傾げると
赤井さんは私の肩に手を置き身を離した。
「安室くんはお前を襲う事はないとは言ったが…
2人きりになってもいいという訳ではない。」
『え……え?』
何だか…
それってまるで……
『赤井さん…安室さんに嫉妬してるみたいですよ?』
「…みたいじゃなく、してるんだ馬鹿。」
『なっ…、!?えぇ!?』
あ、赤井さんが嫉妬!?
いつもカッコよくて自信満々で命令形口調で
クールで冷静なあの赤井さんが…!?
「自分の女が
俺以外の男と2人きりになっていたら妬くだろう…」
『っ……』
まさか赤井さんに嫉妬してもらえるなんて…
ど、どうしよう…
なんかすごく嬉しい…!!!
『赤井さん…私の事すごく好きみたいじゃないですか。』
調子に乗るなって怒られそうだけど
にこにこしながら赤井さんの顔を見ると、彼はフッと笑っていた。