第26章 授業
「美緒さん、お待たせしました。」
『いえいえ。じゃあさっそくレシピ教えますね。』
カバンの中に入れていた大学ノートを出して
トマトソースのレシピを順番に書き込んだ。
「美緒さんが作ったソースは
口当たりがすごく良かったのですが…」
『それはちょっと手間ですけどトマトの種を抜いて作ったからです。あとは…私の作ったものはハーブを少しいれてますがこれはお好みの種類でいいです。
酸味が気になる場合は、砂糖を少し加えてみてもいいですよ。』
ノートにサラサラと作り方の手順とか
注意点をひたすら書き込んでいると、正面に座っている安室さんが私の方を見てニコニコしていた。
『私何か変な事言いましたか?』
「いやいや、美緒さんは本当に料理が好きなんだなって思っただけですよ。
とても詳しくて勉強になります。」
『料理はすごく楽しいですからね。
それに、喫茶店の店員さんに
私のトマトソースを褒めてくれて嬉しい気持ちもあります。』
自然と笑顔になって安室さんに微笑むと
彼は机に片肘をついて私を見つめていた。
「美緒さんの笑顔、初めて見ましたけど
すごく可愛いですね?」
『なっ…!もう!揶揄わないで下さい!!』
そんなの言われ慣れてないから恥ずかしくて
視線をパッと下に下げたら、安室さんの真剣な声が聞こえた。
「揶揄ってなんかいませんよ。」
『え?』
その言葉に驚いて安室さんの方に顔を向けると
真剣な顔で私を見つめている彼と目が合った。
「僕は…あなたに想われているあの男が羨ましいです。」
『…?えっと…それは…』
どういう意味ですか…?と、聞こうとしたところで
お店の入り口のベルが鳴り、そこから灰原さんを除いた探偵団のみんなが姿を現した。
「え…若山先生!?」
「ほんとだー!先生こんなところで何してるのー?」
「まさか…安室のにいちゃんとデートとか!?」
『!?違う違う!デートじゃない!』
ニヤニヤしながら揶揄ってくる子供達に
今日は手作りパン教室があった事や
講師として来てくれた安室さんにレシピを教えて欲しいと頼まれた事を説明すると、彼らは残念がっていたようだが納得してくれた。