第26章 授業
誰もいない職員室に到着した私は
自分の荷物をとって職員室の鍵を閉めてから外に出た。
職員玄関入り口も施錠し、
校門から出たところで白いスポーツカーが止まっているのが目に入った。
…そしてそこから先ほど別れたばかりの
金髪イケメンの安室さんが降りて来た。
「美緒さん、待ってましたよ。」
『…なんでまだいるんですか。』
「もう少しあなたと一緒にいたくなったんです。」
『……はぁ?』
この人が何を考えているのかさっぱり分からない…!
赤井さんの事を探られるのかと思ったけど
今日は全く何も聞いてこないし!!
「実は、あのトマトソースのレシピを教えて欲しいんです。
本当に美味しかったので、ポアロで出してみたいなって思いまして。」
…あぁ、そういうことか。
それならそうと最初からそう言えばいいのに
わざわざ変な言い方して……
私の困っている反応を見て楽しんでるとか…?
「これから僕、ポアロに食材と機材を置きに行くので
一緒に来てもらってもいいですか?
コーヒーもサービスで出しますから。」
『…わかりました。
でもその前に少しだけ電話させてください。』
安室さんから少し離れてスマホを取り出し、
今の状況を伝える為に赤井さんへ電話をかけた。
安室さんは私を襲ったりはしないって聞いたけど
一応知らせておいた方がいいと思って…
でも赤井さんは仕事中みたいで電話は繋がらなかった。
仕方がないので
安室さんと共にポアロという喫茶店に行くとメールをしてから
私は安室さんの運転する車の助手席に乗り込んだ。
「電話の相手は彼氏ですか?」
『…さぁ、どうでしょうね。あなたには教えません。』
「ははっ、どうやら僕はまだ嫌われているようですね。」
…嫌われているかもしれないのに
なんで笑っていられるんだろう。
『別に…嫌いじゃないですよ。
確かに最初は悪い人かもって疑いましたけど
今日子供達に優しく接しているあなたの姿を見て
実はいい人なのかなって思ったくらいですから。』
「…。」
私の言葉に安室さんは黙ってしまい
どうしたんだろうと顔を向けると、驚いた表情で私を見つめていた。