第26章 授業
『えっ、何、地震…!?』
「!!美緒さん、こっちへ!」
『へっ…!?』
安室さんに腕を引っ張られて2人一緒にしゃがみ、
なぜか抱き締められた状態になっていた。
『あ、の…安室さん、』
「動かないで下さい。結構強い揺れですから。」
…まるで私を守ってくれるかのように抱き締めてくる安室さんの腕は、赤井さんと同じように程よく筋肉がついていて、不覚にもドキッとしてしまった。
そのまま揺れが収まるのを待ち、
地震が落ち着いたところで再び安室さんに声を掛けた。
『もう…収まりましたよ?
離してもらってもいいですか?』
「…。美緒さんは抱き心地が良くて
もう少しこのままでいたいんですけど…いいですか?」
『なっ!?何言ってるんですか!?
ダメに決まってるでしょう!?早く離して下さい!!』
慌てて安室さんの腕から抜け出し立ち上がると
彼は私を見てニヤニヤしながら笑っていた。
『ははっ。美緒さん、顔が赤いですよ?」
『〜〜〜っ、もう!誰のせいだと思ってるんですか!!』
私を揶揄う安室さんにムカついて
早く職員室に戻ろうと思い、出口に向かって歩き出した。
…でも私はその途中で立ち止まり
少し離れた場所から安室さんの方へ体を向けた。
「美緒さん?どうしました?」
『…地震から守ってくれて…ありがとうございました…
パン教室も…安室さんと榎本さんのおかげで
私も楽しかったです…。では、失礼します。』
お礼を言った後、すぐに背を向けて家庭科室を出た。
……また揶揄われたりしたら嫌だからね。
私は小走りで職員室に向かったから、
その後安室さんが1人でぼやいていた事は全く聞こえなかった。
「あの人…あんなに可愛かったか…?」
口元を手で押さえている彼の顔は
ほんのり赤く染まっていた。