第4章 熊猫
「…私は君を敵に回したくないよ。
さて、このお嬢さんをどうするのかは決めたかね?」
「先ほど身分証を見て住所を確認しました。
気を失っているだけのようなので彼女の家に向かってます。」
「分かった。
ではその後、我々の隠れ家のホテルに向かうとしよう。」
「了解。」
一軒のアパートについてから俺は彼女を抱き
鞄に入っていた鍵を拝借して部屋に入った。
1LDKのその部屋は決して広くはないが
女1人が一人暮らしをするには十分だろう。
部屋に足を踏み入れると
なんだか懐かしい甘い香りがした。
…待て、懐かしいってなんだ…?
どこかで嗅いだことがある気がする香り。
そういえばバスジャック事件の時も
彼女の瞳を見て懐かしく思ったような気が…。
「俺とお前は…過去に会ったことがあるのか…?」
車の中で彼女の身分証に書いてあった名前を見ても何も思わなかった。
つまり…顔を合わせたことがあるだけということなのか?
「若山 美緒…
お前は一体…誰なんだ……?」
寝室のベットに横たわらせた彼女の顔を見ながら呟いたが
まだ意識のない彼女から返事は返ってこない。
記憶の中にあるこの甘い香りと
今は閉じてしまって見ることができない彼女の黒い瞳…
思い出そうとしたが何も分からないままで…
車でジェイムズを待たせている為
それ以上考えるのはやめ、俺は部屋を出て自分の車に戻りFBIの捜査会議をするためホテルに向かった。