第4章 熊猫
しばらくその車を追跡していると、
埼玉県警の警察官達が犯人達をお縄にしていた。
ジェイムズは無事に解放されて
事情聴取の前に姿をくらまし、
近くに止まっていた俺の車を見つけ助手席に乗り込んできた。
「さすがですね。
咄嗟に暗号を残し自分が乗った車を追わせるとは…」
「あのコートを着た男2人…刑事を名乗っていたが
私に当たり前のように日本語で話しかけてきたからね。
すぐにニセ刑事だと気付いたよ。
彼らは私をランディ・ホークと間違えてお金目的で攫ったようだ。
…それより、このお嬢さんはなぜ君の車に乗っているんだね?」
「ジェイムズが拐われた時に倒れていたのを見つけたんでね。
放置するのもどうかと思いまして…彼女は知り合いですか?」
「いや、今日初めて会った女性だよ。
私が一緒にいた子供達の学校で教師をしているらしい。
…赤井君こそ彼女とは知り合いなのかね?」
「……いえ。」
本当は会ったことはあるが、知り合いという間柄でもないし
説明するのも面倒だから黙っておいてもいいだろう。
「しかし驚いたよ。君があの長髪をバッサリ切るとは…」
「ゲン直しですよ。恋人に振られっぱなしなもんでね。」
「それで?わざわざ私を呼び寄せたのだから
その恋人とはよりを戻せそうなのか?」
「ええ…後悔させてやりますよ。
私を振った事を…血の涙でね。」
俺はかつて潜入していた黒の組織にスパイだとバレて
それ以来奴らは俺の命を狙っている。
タバコをふかしながら
組織を潰そうと意気込んでいる俺の表情を見て
ジェイムズは小さくため息をついた。