第23章 信用
「お前と夫婦に間違われるのは悪くないな。」
『!?!?』
パッと昴さんの方を見ると
少し口角を上げていて、片目だけ綺麗な翡翠色の瞳が見えていた。
『〜っ、もう!変な事言わないで下さい!』
真っ赤になっているだろう顔を見られたくなくて
1人で先にレジの方へと歩き始めると後ろからは
昴さんの笑い声が聞こえたが、無視させてもらった。
そしてレジを済ませて買い物袋に食材を詰め
2人で車に乗り込むと昴さんのスマホが鳴った。
「上司から電話だ……はい。」
昴さんは何回か電話の相手に短く返事をした後
すぐに電話を切っていた。
「すまない美緒、仕事を一件頼まれた。」
『じゃあ私帰りますね。』
「悪いな、家まで送る。」
私のアパートに向かって車が走り出したところで
さっきの電話の相手である上司の人も
赤井さんが昴さんとして生活しているのを知っていると教えてくれた。
「お前も知ってる人だぞ。
ジェイムズ・ブラック…覚えているか?」
『ジェイムズさん………。っ、あー!
アニマルショーで会った人ですね!!』
「まさかあの人が誘拐事件に巻き込まれるなんて
俺も驚いたよ。」
いやいや、そんなことよりあの人もFBIだったことに驚きなんですが…!?
しかも赤井さんの上司だなんて…!
『あれ…?でも誘拐されたのを知ってるって事は…
赤井さんもあそこにいたんですか?』
「なんだ、気付いていなかったのか?」
『え…?何にですか?』
言ってる意味が分からなくて詳しく聞いてみると
私がジェイムズさんを攫った犯人に殴られて
道路で倒れているところを赤井さんが見つけてくれたらしく、
私の身分証を見て車で家に送ってくれたんだそうだ。
『だから教えてもいないのに私の家の場所知ってたんですね!?
…あ!そういえばタバコの香りも服についてました!
もうっ!なんで教えてくれなかったんですか!?』
「お前に何も聞かれなかったからな。
わざわざ言う必要もないと思っていたし、
現にお前も今まで忘れていたじゃないか。」
…確かに忘れてた私が悪いけど
助けてくれたならちゃんとお礼したかったのに!!