第23章 信用
助手席と運転席の距離はなかなか近くて…
何回かこの赤い車に乗せてもらったけど
今まではこんなドキドキしたりしなかったのに…。
真っ直ぐに前を向いて
車を運転する仕草までカッコいい。
私は朝と同じように昴さんに変装している赤井さんをジッと見つめてしまっていた。
「おい、美緒…
あまり見るなと言っているだろう。」
『!!ご、ごめんなさい…つい。』
「…ほら、着いたぞ。」
赤井さんを観察している間にスーパーに到着し
私達は車を降りて店内に入り、カートは昴さんが押してくれた。
いくつかの食材をカゴに入れてからレジに向かう途中、
前を歩いていたお婆さんが持っていたカゴを
売り場に積まれていた商品に引っ掛けてしまい
それは通路にバサバサと散らばって落ちてしまった。
お婆さんは腰を押さえながら拾おうとしていたから
私はサッとそこに駆け寄った。
『大丈夫ですか?代わりに拾いますよ。』
「あらあら…悪いわねぇ。」
「僕も手伝います。」
私が拾っているところに昴さんも手伝いに来てくれて
通路に散らかったものはすぐに片付いた。
「2人とも、ありがとうね。」
私達に何度もペコペコ頭を下げているお婆さん。
…そんなに大したことしていないのに、なんだか照れ臭いな…。
「お二人みたいな
若い夫婦に助けてもらって本当に助かったよ。」
『へっ…!?』
ふ、夫婦って!?私と昴さんはそんなじゃないのに!!
夫婦と勘違いされたことに衝撃を受けていると
お婆さんはもう一度ペコッと頭を下げてその場から立ち去って行った。
「美緒さん?大丈夫ですか?」
『だ、大丈夫、です…。なんか…
勘違いされちゃいましたね…』
恥ずかしいけど、夫婦に間違われた事自体は嬉しくて
にやけそうになるのを堪えていると
昴さんが私の耳元で囁いてきた。