第23章 信用
「前世と同じ職業に就かなかったのはなぜだ?」
『学校の先生になるのも夢だったんです。
料理人としてはまだ未熟でしたけど…
ここが物語の世界だと分かった時
主人公である実物の江戸川コナン君が見たくて…ほんの好奇心で帝丹小学校で働くことに決めました。』
「そうか…
じゃあ美緒はボウヤの正体を知っているんだな。」
…確かに彼が工藤新一であることは知っているけど
本人がいないところでその話をするのは良くない気がしたので
私は否定も肯定もせずに黙っていたら
赤井さんは江戸川くんの事をそれ以上深く尋ねてこなかった。
「お前と知り合った時、組織の人間かもしれないと疑って
色々調べさせてもらったが何も出てこなかった…
何かある、とは思っていたがそういう事情だったんだな。
どうりで料理が上手いわけだ。」
『……え…』
「?どうした?」
『私の話…信じてくれるんですか…?』
私の話をすんなり受け入れている赤井さん。
こんな非現実的なこと…
ありえないだろって馬鹿にされると思っていたのに…
「お前が俺にそんな嘘をつくメリットなどないし
事実として受け入れるとこれまでの事も説明がつく。
それに…」
赤井さんは私の頭の上に掌を乗せると私に優しく微笑んできた。
「美緒は嘘をつかないだろ?
俺はお前の事を信じているからな。」
『っ…』
言葉で言い表せないくらい
赤井さんの言葉が嬉しかった。
自分のことを信じてもらえるのが
こんなにも嬉しいことだなんて…全然知らなかった…。
「ふっ…お前はすぐ泣くな?」
『だっ、て……』
赤井さんの言葉と頭に置かれた赤井さんの温もりが優しくて
勝手に涙が出てきちゃうんだよ…
「バスジャック事件で会った時も
お前は怯えている様子が全くなかったから…
あの事件の結末も知っていたんだろう?」
『はい…その通りです。』
もうさすが、としか言いようがない。