第21章 標的
「こんな事もあろうかと鈴木会長から借りて来たんです。」
早速それを赤いエッグにはめてみると
ピッタリと合わさった二つのエッグ。
「つまり喜一さんは2個のエッグを別々に作ったのではなく
2つで1つのエッグを作ってたんですね。」
私と昴さんも近くでそのエッグを見させてもらい、
とても煌びやかにキラキラと輝いていた。
『香坂先生
この外側に付いているのって全部ダイヤなんですか?』
「いえ……これは多分ガラスじゃないかしら。」
こんなに綺麗なのにただのガラスなの!?
凄すぎる…!
喜一さんという香坂先生のひいお爺さんの職人技に関心していると、昴さんはそのエッグを無言のまま見つめていて何か考え込んでいる様だった。
『昴さん…?どうかしたんですか?』
「…このエッグは皇帝から皇后への贈り物だと聞いていたのに、そんな質素な作りにするのが不思議でして…
それに喜一さんは、世紀末の魔術師と歌われていたんですよね?
何かまだ細工があるんじゃないかと思えてならないんです。」
私達の話をそばで聞いていた江戸川くんが
何か閃いた様で二つのエッグを手に取っていた。
そして側にあった台座の窪みに懐中電灯を入れ
その上に重なったままのエッグを乗せると…
『すごい…エッグが透けて中の人形が動いてる…。』
「エッグの中には光度計が仕掛けられているようですね…」
うっとりとそのエッグを眺めていると
やがてエッグの頂点のガラスからまばゆい光が放たれて
皇帝一家の写真が壁に映し出されていた。
「なるほど…
エッグの中の人形が見ていたのはアルバムだったんですね。」
『え?それってどういう事ですか?』
「あのエッグは、"メモリーズ・エッグ"とも呼ばれていたんですよ。」
『メモリーズ……なるほど、思い出ってことですね!』
みんなで一つ一つの写真を眺めていると
江戸川くんが声を上げてある写真を指差していた。
「あの写真の女の人…
夏美さんのひいお婆さんじゃない?」
その写真は執務室で見た喜一さんという男性と一緒に
2人で椅子に腰掛けているものだった。