第21章 標的
しかし思い付くパスワードをいくつか言葉を入力してみても
反応は何もなかった。
「夏美さん、何か伝え聞いていることはありませんか?」
「いえ…特には…」
「…バルシェ、ニクカッタベカ……
夏美さん、僕と蘭ねーちゃんに教えてくれたのよね?
この変な日本語が子供の時から耳に残って離れないって。
本当はロシア語かも知れないよ?」
私には何のことか分からなかったけど
その言葉が扉を開くキーワードのヒントの様だった。
そして、ロマノフ王朝の研究家である女性が
あるロシア語の言葉を思いつきみんなに伝えていたけど
流石に私はロシア語なんて聞き取れなかった。
「ねぇ、今のロシア語ってどういう意味なの?」
「ああ…英語だと[The last wizard of the century]。
えーっと日本語では…」
『直訳すると[世紀末の魔術師]ですね。』
私がそう呟くと、みんなはハッとした顔をしていた。
『え、え…?どうかしたんですか?』
「怪盗キッドの予告状にも書かれていたんです。
世紀末の魔術師って。」
そうなの!?
ていうかなんで怪盗キッド!?
そばにいた蘭ちゃんが驚いている私に
香坂先生の遺族が遺したエッグをスコーピオンだけではなく、怪盗キッドも狙っていたことを教えてくれた。
そして、ロシア語で世紀末の魔術師とキーボードに入力すると
何かが動いているような音がして、床がゆっくりと開き
地下へ繋がる階段が現れた。
「面白い仕掛けですね…
何だか楽しくなってきましたよ。」
そう呟いた昴さんは何だか生き生きとしているように見えて…
その時の昴さんの顔が
ニヤついている時の赤井さんと雰囲気が似ていて
胸がドキッと高鳴った。
『…あの、昴さん。』
「?なんですか?」
…本当は今すぐここで聞いてみたい。
あなたは赤井さんなの?って……
でも今はそんなことを聞いている場合じゃない。
昴さんには、『何でもないです』とだけ伝えて
私もみんなの後に続いて地下へと降りて行った。