第20章 忘憂
「若山さん、料理は楽しくやらないとね?」
『!!はい…そうですね!!」
香坂先生のおかげでお菓子作りに集中できた私は
今までで1番上手にパウンドケーキを作る事ができた。
お菓子教室に参加した他のメンバーと一緒にケーキを食べ終わり、片付けを済ませぞろぞろと帰る雰囲気の中、私は香坂先生に声をかけに行った。
『香坂先生、ありがとうございました。
たくさんお菓子作りのコツを学べて楽しかったです。』
「ううん、私も若山さんに教えるの楽しかったから。」
フワッと笑う先生は本当に美人で優しくて…
今回この教室に参加できて良かったって心から思った。
「若山さん、実は私、もうすぐパリに帰る予定なの。」
『え?そうなんですか?』
日本に帰国したのは
ひいお婆さんとひいお爺さんの遺した物を探しに来たとのことだった。
「手掛かりを見つけたから
明日、横須賀のお城に探しに行くの。」
『横須賀のお城って…
あのCM撮影とかによく使われている?』
「ええ。実はあのお城を建てたのは私の曽祖父なの。
それで良かったらなんだけど…若山さんも一緒に来ない?」
『え!?私もですか!?』
「若山さん、何か悩みがあるんでしょう?
あなたの気晴らしになればいいかなって思って。
とっても綺麗なお城よ。」
確かにそんなお城なら一度は見てみたいけど……
私なんかがついて行ってもいいのかな?
「それに、このまま若山さんとお別れなんて寂しいもの。
最後の思い出に一緒にお城を探索しましょう?
他にもたくさんの人が来ますから、きっと楽しくなりますよ。」
『そうですか…?
じゃあせっかくなのでご一緒させて頂きます!』
そう答えると香坂先生はすごく嬉しそうな顔をしていて
明日は現地集合、そして待ち合わせ時刻を聞いてから
私はスタジオを出て家に帰ってきた。