第20章 忘憂

『！！』


なんでこの人が…赤井さんの事を…？


なんで私に聞くの…？


この人は敵？それとも味方…？



どうしよう…と困っていると、安室さんはフッと笑い出した。



「あなたのその表情からすると
やはりあの男のことを知っている様ですね。」


『…えぇ、知ってますよ…。』




知らない、なんて嘘はつけそうになかったから
正直に答えると、安室さんは少し私との距離をつめてきた。



「あなたはあの男とどんな関係だったんですか？」

『どんなって言われても……』

「結構仲が良かったと聞いています。
あなたの家にも頻繁に行っていた様ですし。」

『…っ、それがなんだっていうんですか？
安室さん、探偵やってるって言ってましたよね？
だったら知っているはずです。
あの人がもう……この世にはいないって事…』

「…えぇ……でもあの男は、」

『やめて…！それ以上あの人の話はしないで！！』



ただでさえ赤井さんが生きているかもしれないって知って
頭の中がこんがらがっているままなのに……！

この人は一体何を探っているの？




これ以上私の頭の中をパンクさせないでほしい…





『あなた…本当に何なんですか？
私があの人を想っているのを知ってて
傷口を抉りにでも来たんですか？
デリカシーのカケラもないんですね！』


安室さんに勢いよく思っていることを伝え
彼の横を通り過ぎようとしたが、腕を掴まれて止められてしまった。



『ちょっと！離して下さい！』

「待って下さい美緒さん…」

『っ、いいから離して！』


勢いよく手を振り払うと掴まれていた腕が自由になり
私は泣きそうになるのを堪えながら安室さんの顔を睨みつけた。



「配慮が足らず、申し訳ありませんでした。
あなたがそんなに苦しんでいるとは思わなかったので…」

『…』

安室さんは先程の冷たい表情とは異なり
今は目尻を下げて少し落ち込んでいる様な表情に変わっていた。