第19章 亡霊
『昴さん…?昴さーん。どうしたんですか?』
「…美緒さん。
その金髪の男性に何もされませんでしたか?」
『いえ……何も。
ただ何かあったら連絡して下さいって名刺を渡されましたけど…
あ、ありました。』
鞄の中に無理矢理入れられた名刺を取り出すと
昴さんがすごい勢いでパッと私の手から取り上げて
その名刺をマジマジと見ていた。
『その方とお知り合いなんですか?』
「……いいえ。この名前には見覚えがありません。」
…この名前にはって…どういう意味?
金髪の知り合いの人はいるってことかな?
「美緒さん、この名刺は僕が処分しておきますね。」
『え?まぁ、いいですけど…。』
「もしかして…
この男に連絡をするつもりだったんですか?」
『へ…?』
そう話す昴さんはなんだか少し怒っているように見えて
少しずつ私との距離を縮めてきた。
驚きながら後退りすると
背中にコンクリートの壁があたり、横に移動しようとしたら
昴さんの腕が伸びて来て壁に手をつき、逃げ道を塞がれた。
『昴さん…っ、近いです!』
「あなたが逃げるからでしょう。」
『だって…!昴さんが近づいてくるから…!』
私に壁ドンをしてきた昴さんは
以前工藤邸の書斎で迫って来た時と似たようなオーラを放っていて、あの時のように恐怖は感じないけど
なんで昴さんが怒っているのか分からなくて戸惑った。
「僕の知らないところで他の男から名刺を受け取るとは…
気に入りませんね。」
『はぁ…?なんですかそれ!』
たかが名刺を貰ったくらいでこの人は何を言っているの?
昴さんの考えていることが分からなくて
彼の整いすぎている顔をジッと見つめていると大きなため息をつかれた。