第19章 亡霊
帰り道、昴さんはなぜかずっと私の手を繋いでてくれて…
すごく恥ずかしかったけど
昴さんの体温を感じていると、とても落ち着いた。
昴さんが無事だったことが実感できた。
お互い黙ったまま道を歩き、
もうすぐ私のアパートに到着する、というところで昴さんが口を開いた。
「結局今日はあまりデートらしいこと出来ませんでしたね。」
『仕方ないですよ。爆弾騒ぎがあったんですから。』
「また今度、時間がある時にデートしましょうね。」
『…そうですね。』
私がすんなり肯定すると思っていなかった昴さんは
少し驚いた顔で私を見た後、繋いでいた手を離して立ち止まった。
『?昴さん?どうしました?』
「…忘れてしまうところでしたよ。」
昴さんは手に持っていた紙袋から箱を取り出して
パカっと開けて私に差し出した。
『やっぱり…この時計可愛いです。』
箱の中身は百貨店で選んだ時計。
昴さんがこれを取りに行っていた事をすっかり忘れていた。
「美緒さん、左手を。」
『!?じ、自分でつけれますっ!』
「いいから、ほら。手を出して下さい。」
なかなか左手を出さない私に対して
痺れを切らした昴さんは私の手首を掴み、腕時計をつけてくれた。
「とても良く似合ってます。」
『…っ……ありがとうございます…。
大事に使わせてもらいますね。』
昴さんの顔を見ながらお礼を伝えていると
彼の視線が急にフッと私の鞄へと向けられた。
「美緒さん、鞄の外側の底が少し汚れているようですが…」
『?…あぁ、今日昴さんとの待ち合わせ場所に向かう途中
知らない人にぶつかっちゃって鞄落としちゃったんですよ。』
「そうでしたか…怪我はありませんでした?」
『はい、全然。そのぶつかった男性も昴さんみたいに
怪我がないかすごく心配してくれました。
髪色が金髪だったから、最初は外国の方かと思ってヒヤッとしましたけど。』
「…!!」
私がそういうと昴さんは驚いて固まってしまい
不思議に思って声をかけた。