第19章 亡霊
そのまましばらく頭を抱えながら
喫茶店で昴さんが戻ってくるのを待っていると
店の外が少し騒がしくなり、店内に入って来たお客さんの会話が耳に入って来た。
「ったく、ひでー目に遭ったぜ。」
「爆弾が結局偽物だったなんてな。」
「まぁ、あの毛利小五郎のお陰で犯人捕まったからよかったんじゃね?」
『!?』
爆弾…偽物だったんだ!
よかったぁ……
ホッと安心していると
昴さんが私を迎えに喫茶店内に入って来た。
「美緒さん、お待たせしました。」
『昴さん…無事で良かったです。』
「……どうしたんですか?」
『え?』
「どうして…泣いているんですか?」
昴さんに言われて頬を触ってみると濡れていて
そこで初めて自分が泣いている事に気付いた。
『っ、あれ…?なんで私泣いてるですかね…?
昴さんの顔見たらなんか…安心、しちゃったのかな…。』
なぜか今は赤井さんが生きていた喜びよりも
目の前にいる昴さんが無事だったことへの喜びしかなくて…
…そこまで考えたら頭の悪い私でも分かった。
きっと私は…昴さんのことを意識しているんだ。
好きかどうか聞かれると分からない。
赤井さんのことを忘れていないのも本当。
でも今は…
昴さんがちゃんと私の元へ戻って来てくれたことが1番嬉しかった。
いつの間にか私にとって昴さんは……
とても大事な人になっていたんだ。
「美緒さん…心配かけてすみません。
僕は大丈夫ですから……泣かないで下さい。」
…確かにこのまま泣いていると他のお客さんに
昴さんが私を泣かせているように見えてしまう。
それは流石に悪いので、私達はお店を出て
昴さんが私を家まで送ってくれることになった。