第3章 場周
助かったことに安心したのか、小さいため息をついたその女は、急に何かを思い出したかのように表情がガラッと変わり、バスの方を振り返って走り出した。
「!!おい!どこへ行く!!」
無意識に声をかけたが、彼女はふらつきながら走り続けてバスの近くで止まった。
すると、爆発と同時にバスの中から子供2人が飛び出してきて
女は2人をキャッチして地面に横たわった。
そして2人を大事そうに抱え、目を細めた彼女の瞳を見た時、なぜか懐かしい気持ちになった。
…なんなんだ、あの女は……
なぜ俺は…
あんなどこにでもいそうな平凡な女が目に留まるんだ…?
自分で自分のことが分からないでいると、
彼女が助けた少女とその連れの子供達は
警察の車で病院に運ばれて行ったようだ。
そしてその場に残った眼鏡のボウヤとその女の会話が聞こえてきた。
「先生は病院行かなくて大丈夫なの?」
『大丈夫だよ。大人だもん。』
…何が大丈夫だ。
今にも倒れそうな足取りをしているくせに…
2人の近くに向かって歩き出したどり着くと
案の定、足を一歩踏み出しただけで彼女の体は前のめりに倒れそうになり、俺は咄嗟に彼女の体を抱き止めた。
「…本当に……バカな女だ。」
すでに限界だったはずだが
子供の前だから強がっていたんだろう。
俺の腕の中で彼女はもう意識がなく
駆け寄ってきた救急隊員に彼女を任せて、事情聴取に向かった。
…そんな俺の様子を、眼鏡のボウヤは怪しむような目で見ていて
FBIの同僚であるジョディは驚いた表情をしていた。