第3章 場周
side 赤井
FBIの任務で都内のバスに乗った俺は
ターゲットを監視しやすい1番後ろの席に向かった。
しかしその席にはすでに乗客の女が1人座っていて
俺はその女の隣に腰掛けた。
俺と同じようにマスクをしている女は窓に身を預けて座っている。
…恐らく風邪か何かで熱が出て病院に向かう途中なんだろう。
その女は、俺が隣に座った事で一瞬驚いたような顔をしていたが、すぐに視線を逸らしていたので気にしないことにしたが…
最悪なことにバスがジャックされてしまい、心の中でため息をついた。
隣に座っている女性の様子をチラッと見るが
熱で辛そうにはしているが、犯人達に全く怯えている様子は見られなかった。
俺がバスに乗車した時よりも呼吸が荒くなっている女は、近くの席に座っている子供と知り合いなのか、心配そうな目を向けられており、それに対して力無い笑顔で返していた。
…バカな女だな。
そんな無理矢理作った笑顔では余計に心配させるだけだろう。
しかしこのまま熱が高い状態を放置するのもマズいな…
そう思っていると、
バスは高速道路に乗り、きっとこの後犯人達は動くだろうと察しがついた。
なぜかは分からないが隣に座っている女を少しでも安心させてやりたくて
気がついたら声をかけていた。
「大丈夫だ。きっともうすぐ助かる。」
『…え……?』
まさか話しかけられるとは思っていなかったのか
女はパチパチと瞬きをした後、ゆっくり頷いた。
その後、眼鏡のボウヤの名案のおかげでバスは停車したが、爆弾の起爆装置が作動し全員バスから離れるために立ち上がった。
すぐにバスを降りてもよかったんだが
熱で苦しんでいる女が気がかりで、俺は彼女のそばに足を進めていた。
「おい、立てるか?」
『…あ…はい…大丈夫です…』
…全然大丈夫そうではない女の腕を掴んでバスを降り
早く病院に行けと伝えると、俺と視線を合わせた後、頭を下げた。