第19章 亡霊
金髪のイケメンは
私のカバンに名刺を勝手に突っ込んですぐに去って行った。
『強引な人だなぁ…
!!ってそんな事より!早く行かなきゃ!』
急いで待ち合わせの場所に向かうと
昴さんは建物の柱にもたれ掛かりながら腕時計で時間を確認していた。
『っ、昴さん!ごめんなさい…!
遅れちゃい…ました…っ!』
息を切らしながらそう言う私に昴さんは優しい笑顔を向けていた。
「バスが遅れたなら仕方ないですよ。
ゆっくり来てもいいと言ったじゃないですか。」
『そうなんですけど…お待たせするのは悪いので…』
「…美緒さんは本当に優しい方ですね。」
そのまま私の頭に手を伸ばし、ゆっくり頭を撫でられた。
こうやって頭を撫でられるのは赤井さんの時以来で
一瞬戸惑ったけど、昴さんの手は赤井さんと同じように
何だかとても安心する感じがした。
「さて、そろそろ行きましょうか。」
『…は、はい。そうですね。』
昴さんの後に続いて米花百貨店の中に入り
やってきたのは時計が売っているお店。
「実はお世話になっている友人にプレゼントをしたくて
美緒さんの意見も聞かせて頂けますか?」
『はい、私でよければ。』
店内にある時計をいくつか2人で物色しつつ
贈る相手は女性だと教えてくれた。
『その方はどんな人なんですか?』
「そうですね…とても優しくて可愛らしい印象です。」
その女性を思い浮かべているであろう昴さんは
フワッと優しい雰囲気が漂っていて…
昴さんの大切な人にあげるのかな…?と思うと
胸が少し痛んだ気がしたけど、その痛みに気づかないフリをして再び売り場を回り始めた。
『…こういうのはどうですか?』
スッと昴さんに一つの時計を見せると
いいですね、という返事をくれた。
「ちなみに、美緒さんだったらどの時計が好きですか?」
『私?…私はそうですね……これが1番好みですかね。』
手に取ったのはシンプルなピンクゴールドの時計。
文字盤は数字ではなくストーンで時刻を表していて
メタルバンドだからアクセサリー感覚でつけれそうなもの。