第18章 釣魚
玄関の扉が閉まり
アイツの慌てた表情が可愛くて、それを思い出すとクスッと笑みが溢れた。
「では僕も工藤邸に帰りますね。」
「…僕も新一兄ちゃんの家に用があるから
昴さん、一緒について行ってもいい?」
「えぇ、どうぞ。一緒に行きましょうか。」
茶髪の女の子に軽く会釈をしたが
相変わらず警戒されているようで特に言葉を発しないまま彼女は俺とボウヤを見送った。
工藤邸の玄関からリビングに入ったところで
ずっと黙っていたボウヤが口を開いた。
「赤井さん、若山先生をデートに誘うなんて…
どういうつもり?」
「ふっ…聞いていたのか?」
「トイレに行った時に少しね。」
ボウヤの耳の良さに少し驚いていると
俺の返事を待たずにまた質問を投げかけた。
「赤井さん、若山先生と料理教室もしてるみたいだし
このままずっと側にいたりしたら正体バレちゃうかもしれないよ?」
…なるほど。
それを俺に聞くために博士の家に泊まると言い出したのか。
彼の行動の辻褄が合ったところで俺はボウヤの方へ体を向けた。
「ボウヤも分かってるんだろう?
美緒が沖矢昴を通して俺を見ている事を。」
「!?気づいてるのに…どうして離れないの?
少し距離をとれば2人は別人だって…気のせいだって思わせられるかもしれないのに!」
…どうして、だと?
そんな理由は一つしかない。