第18章 釣魚
青里さんは近づいて来た昴さんにナイフを向けたけど…
昴さんはナイフを片手で弾き飛ばし、
犯人が驚いている間に吉田さんは昴さんによって助け出されていた。
あぁ…まただ…
また昴さんが赤井さんに見えちゃった。
本当に私の目はどうしちゃったんだろう。
「先生…?」
『…。』
「若山先生!どうしたの?」
『えっ…あ……ううん、何でもない…』
江戸川くんに声を掛けられてハッとした私は
助け出された吉田さんの元へ向かった。
『吉田さん!大丈夫!?
どこか怪我したり痛いところはない!?』
「大丈夫っ!昴のお兄さんが助けてくれて
どこも怪我してないよ!」
『っ、良かった……本当に良かった…!』
吉田さんが無事だったことに安心した私は
彼女のことを抱きしめた。
「先生…?泣いてるの…?」
『…吉田さんが無事で嬉しくて……
私はもう…大事な人がいなくなっちゃうのは…嫌なの…』
もう二度と…あんなに辛い思いはしたくない。
赤井さんが死んだ時のような苦しみに
私はまた耐えられる自信なんてなかったから…
吉田さんを抱き締めながら涙を流す私を
江戸川くんと昴さんが悲しそうな目で見ていたことには全く気づかなかった。
「先生っ!歩美は大丈夫だから泣かないで!」
「犯人はもう捕まったんですし早く帰りましょう!」
「俺、腹減っちゃったから早く魚食いてぇー!」
吉田さんと円谷くんと小嶋くんは
泣いている私を元気付けるために明るい顔で話しかけてくれて…
私は手で涙をグイッと拭き取り、みんなに笑顔を向けた。
『そうだね!帰ろっか!』
みんなに手を引かれて立ち上がってから私達は船に乗り込み、陸についてからは昴さんの車と警察の人のパトカーの2台で阿笠博士の家へと向かった。