第3章 場周
バスを降りて少し離れたところまで歩くと
赤井さんは私の腕を離し「早く病院に行けよ。」と言ってきた。
彼にペコっと頭を下げて
とりあえず助かったことにふぅ…とため息をついていると、江戸川くんと灰原さんがいない事に気づいた。
…しまった!!あの2人って……!
そこでまた一つ思い出した。
灰原さんは自分の命を諦めてバスに残っていることを…
そして彼女を助けに江戸川くんがバスに戻ることを…!
…名シーンだと聞かされていたのに、本当に私は頭が悪いな!
「!!おい!どこへ行く!!」
赤井さんの声が聞こえた気がしたけど
私は熱でふらつきながらもバスに向かって走り出した。
確か…
聞いた話では2人はバスの後ろの窓から飛び出てくるはず…!
思っていた通りバスの後ろの窓が割れて
爆発と同時に灰原さんを抱えた江戸川くんが飛び出してきたから、私は2人をキャッチして地面に横たわった。
『は…ぁ……2人とも…大丈夫…?』
「えっ…若山先生!?なんで!?」
『2人が外にいないから…心配で戻ってきたの…
これでも一応先生だからね…?』
「先生…」
『よかった…2人が無事で。』
2人を抱え込んだままギュッと抱き締めると
私達のそばに吉田さんや刑事さんが近づいてきた。
灰原さんは少し足に怪我をしてしまったようで
刑事さんの車で先に病院に運ばれた。
そして残った私と江戸川君が事情聴取を受けることになった。
「先生は病院行かなくて大丈夫なの?」
『大丈夫だよ。大人だもん。』
…本当は全然大丈夫じゃないけど……
なんだか目が霞んできたし……
私はどうやら限界が来てしまったようで
足を一歩踏み出したら体がぐらっと前に傾いた。
…その時、誰かに抱き止められた感覚があったけど
その人物を確認する前に私は意識を失ってしまった。