第16章 料理
『玉ねぎはみじん切りでお願いします。
鳥もも肉とじゃがいもは一口サイズで。』
「了解です。」
沖矢さんは私が指示したことを手際よくやっていて
とても料理が苦手な人には見えなかった。
『本当に苦手なんですか?
思ってたより具材切るの上手です。』
「美緒さんにみっともない所を見られたくないので
少し練習しました。」
『…私が来た意味ないじゃないですか。』
「味付けとかはまだまだなので教えて欲しいんですよ。」
…何だか言いくるめられている気がするけど
頭のいい沖矢さんに口で勝てる気がしないので
深く突っ込まない事にした。
『次は具材を炒めます。
みじん切りにしておいたニンニクと生姜と玉ねぎを入れて…』
「…いつの間にニンニクと生姜を切ってたんですか?」
『?さっきあなたの後ろでやりました。』
「早すぎて気付きませんでした…」
『2人だと効率よく作れますからね。
1人で作る時は大変だと思うので
市販のおろしニンニクとおろし生姜で代用してもいいですよ。』
「…やはりあなたに頼んで良かったです。
今日はとても勉強になります。」
フワッと笑う沖矢さんは赤井さん並みにイケメンで…
この前会った時みたいに、また胸がドキッと高鳴った。
…本当にイケメンって罪だ。
笑うだけでもときめかされる。
その後、私は沖矢さんの隣で指示を出すだけにして
彼1人に調理をお任せした。
『あとは蓋をして煮込むだけです。
大体…15分くらいでいいかと思います。』
「分かりました。じゃあ少し座って休憩でもしましょう。」
『そうですね…
あ、でもその前にお手洗いをお借りしてもいいですか?』
沖矢さんにトイレの場所を聞き、1人でキッチンを出た。
そして用を足してからリビングに戻ろうと思ったが…
『やばい…迷った…!』
広すぎてどこからきたのか分からなくなっちゃった…。
近くにあるドアを片っ端から開けてキッチンに戻ろうとするけど、なかなか辿り着けない!
困ったなぁ…と思いながら一つのドアを開けると
とても広い書斎の部屋にたどり着いた。