第16章 料理
キッチンに2人で並び、
持ってきた横長のパウンドケーキを出し包丁とまな板を借り丁寧にカットした。
「いい香りですね。ドライフルーツですか?」
『はい。沖矢さんお酒が好きって言ってましたよね?
洋酒に漬け込んで作ってみたんです。』
「それは楽しみですね。
じゃあさっそく頂きましょうか。」
リビングのテーブルにお茶一式を運び
向かい合わせのソファーにそれぞれ腰掛けてからお互いにケーキを口に含んだ。
「!!美味しいですね…!甘さは控えめですけど
生地がしっとりしていてとても食べやすいです。」
『お口にあって良かったです。
でも私的には及第点ですかね……』
やはりケーキを作るのは難しい…
もう少し練習する必要があるな。
「とても美味しく出来てると思いますが…」
『いえ、ドライフルーツを生かすにはもう少し生地をしっとりさせるべきでした。牛乳の量が少なかったのかな…?
生地の混ぜ方も見直さないと…
あとは焼き色…オーブンの温度上げてもよかったかも。』
1人でぶつぶつと改善点を口にしていると
向かいに座っていた沖矢さんはクスクスと笑っていた。
『!!す、すみません!
1人でペラペラと反省に浸ってました!』
「ふふっ、いえいえ。
美緒さんは料理をするのが好きなんですか?」
『はい…唯一の趣味なんです。
最近はちょっとお菓子作りにハマってまして。』
休みの日に時々作ったりしてるから
朝昼晩のご飯をお菓子で済ませることもあるくらいだ。
「じゃあ今度はぜひ
改善したパウンドケーキを頂きたいですね。」
『え!?そんな練習台みたいなことさせられませんよ!』
「美緒さんの作る物なら喜んで食べますよ。
楽しみにしてます。」
『えー…プレッシャーが半端ないんですけど…』
上手く作れる様になるにはまだまだ時間がかかりそうなのに
沖矢さんは私とこれからも会うつもりなのかな?
…あまり男友達がいない私にとっては
そういう付き合い方がいまいち分からない。