第16章 料理
開人くんの家が火事になった日から1ヶ月後。
私は今日仕事がお休みで
借りていたハンカチを返す為に沖矢さんが住んでいる工藤新一くんの自宅に伺う予定だ。
本当はもっと早く返しに来る予定だったんだけど
最近は休みの日に他の学校の教職員達とのセミナーがあったり
講演会に参加したりとなかなか時間が取れなくて1ヶ月も経ってしまった。
沖矢さんとは連絡先を交換した日から
時々メッセージを送り合っていた。
…そんな大した内容のことは話していないんだけどね。
歩いて工藤邸に到着し門の前で呼び鈴を鳴らすと
すぐに沖矢さんが玄関から出てきてくれた。
「こんにちは、美緒さん。
わざわざ来て頂いてすみません。」
『こんにちは。
こちらこそ来るのが遅くなってすみません。
あ、これ…お借りしてたハンカチなんですけど…』
「まぁまぁ、話は家の中でしましょう?
あなたが来てくれるので美味しい紅茶を用意したんです。」
えーっと…
私はすぐ帰るつもりだったんだけどな…。
でもわざわざ用意してもらったのに
このまま帰るのも悪いから、私は工藤邸にお邪魔することにした。
「今スリッパを出しますね。」
『はい…お邪魔します。』
家の中はとてつもなく広くて
こんな広い家に一度でいいから住んでみたいな〜なんて思っていると、沖矢さんがリビングに案内してくれた。
「こちらのソファーにどうぞ?
今紅茶を淹れてきますから。」
『あ…手伝いますよ!
ハンカチのお礼にパウンドケーキ持ってきたので
お皿を借りてもいいですか?』
持っている手提げ袋に目を向けた沖矢さんは
とても嬉しそうに笑っていた。
「ありがとうございます。
先日頂いたクッキーとドーナツもとても美味しかったです。
実は今日も何かを持ってきてくれるんじゃないかと楽しみにしてました。」
…ちょっと図々しい気がするけど
楽しみにしてくれるのは悪い気しない。