第15章 空虚
開人くんのお見舞いを終え
帰りも沖矢さんに車で私のアパートまで送ってもらう事になった。
私はいいって言ったのに探偵団のみんなが…
「お兄さん!帰りも若山先生を送って行ってあげて!」
「そうですね!何かあったら危ないですし!」
「オレ達はまた博士に送ってもらうからよ!」
って、顔をニヤニヤさせながら言うから
明らかに2人きりにしようと企んでいる感じだった。
でも沖矢さんは嫌がる顔一つせずに
最初からそのつもりだと言っていたので、お言葉に甘える事にした。
そして自分のアパートまでの道案内をしながら雑談をしていると、あっという間に私の家の近くについた。
『送って頂いてありがとうございました!
ハンカチはまた洗ってから返しに伺いますね。』
「分かりました。
では……あなたの連絡先を聞いてもいいですか?
私が家にいない時もあるかもしれませんので。」
『あ、そうですね。』
私たちは互いにスマホを取り出して連絡先を交換したが…
その時、沖矢さんがスマホを持つ手が気になりジッと見つめてしまった。
「どうかしましたか?」
『っ、いえ…沖矢さん左利きなんだなって思いまして…』
「ええ、まぁ…。それが何か?」
『…何でもないです!変な事言ってごめんなさい。』
だめだな、私…
左利きの人を見ただけで赤井さんを思い出すなんて…
私の目の前にいるこの人は
今日会ったばかりの人で赤井さんとは関係ない人なのに。
最後にもう一度お礼を伝え、頭を下げて車を降りようとしたら
沖矢さんに腕を掴まれてしまった。