• テキストサイズ

《赤井夢》Happiness{R18}

第15章 空虚



side 赤井




車の助手席に美緒を乗せて病院に向かう途中
悲しそうな顔で『忘れられない人がいる』と言っていた美緒。


俺が死んだと分かった日から数週間経った今でも
俺を思ってくれている美緒を目の前にして愛しさが込み上げてきた。


…生きていると伝えることができたらどんなに幸せだろう。




沖矢昴の気持ちになって、羨ましいなどと口にしたが
もし美緒が俺以外の男を思っていたらそれは本音になる。


俺の言葉に少し困った表情をしていた美緒だったが、
タイミング良く病院に着き2人で車を降りた。


そして大家の息子の病室に行き、子供達と美緒は楽しそうに会話をしていた。


「若山先生っ!みんなも!来てくれてありがとね!」

『開人くんが無事で本当に良かった!早く元気になってね。』

「うん!でも本当は今日
先生に僕のミニカーのコレクション見て欲しかったのに…
全部燃えちゃってたよね…?」


…そういえば大量のミニカーが発見されたと警察が言っていたな。
でもなぜそれを彼女に見せたかったんだろうか。


「開人くん、どうして先生に見て欲しかったんだい?」


俺がそう尋ねると、
彼は美緒の方を見ながら答えた。


「僕の宝物を見たら先生が元気になってくれると思ったんだ!
先生にはこの前、調理実習の時に助けてもらったから
何か恩返ししたくて…
ごめんね、先生。僕……先生の為に何も出来なくて…」


…自分のクラスの生徒ではない子にまで
ここまで好かれているなんて……


美緒は放火犯に対して本気で怒っていたし
コイツの人の良さは子供達にも伝わっているんだな。




『開人くん…私は君のその気持ちだけですごく嬉しいよ!
でも私が1番元気をもらえるのはね?
開人くんが元気でいてくれる事。
もちろん開人くんだけじゃなくて探偵団のみんなもね。』


そう答えた時の美緒は
俺が今まで見たことのない1人の教師として顔つきだった。


「わかった!じゃあ僕、早く元気になるね!」

『うん!元気になったらまた学校で会おうね。』


その後も少し雑談をしていたが
あまり長時間居座るのも悪い為、ここに来た時と同様
俺が美緒を家まで送ることになった。






/ 617ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp