第15章 空虚
side 赤井(沖矢)
俺は先日、水無怜奈によって殺されたことになっており
今は沖矢昴として顔と声を変え、
目立たないアパートでひっそり暮らすことになったんだが…
運が悪い事にそのアパートが火事になり
住む場所が無くなってしまったので、阿笠博士の隣にある工藤新一の家を借りる事になった。
そしてアパートの大家の息子が入院している病院へ美緒達を送る為、
車を停めてある場所にボウヤと共に歩いて向かった。
彼は俺が赤井秀一だと知っているし
…少々聞きたかったことがあったから丁度いい。
「ボウヤ、なぜ美緒を連れてきたんだ…」
「偶然だよ?
開人くんが若山先生に元気になって欲しくて
遊びに来るように誘ってたんだもん。」
「…。」
「若山先生、ここ最近
生徒達には気付かれないように明るく振る舞ってたけど
無理してるのは誰が見ても分かったよ。
痛々しくて…とても見てられなかった…」
だからといって美緒を連れてきたら
俺の正体に気づく可能性だってあるだろう…
だが美緒がまだ俺のことを思って
悲しんでくれているのだと分かると、とてつもなく嬉しい気持ちになった。
「赤井さんだって先生に会いたかったんでしょ?
すごく見てたもんね。」
当たり前だろう…
ずっと美緒に会いたくて仕方なかった。
見ないようにしても、自然と目が向いてしまったんだ。
「この姿では…美緒に会いたくなかったんだがな。」
「え?どうして?」
「…。」
「赤井さん?」
そんなの言えるわけがない。
…近くにいると美緒に触れたくなるから、だなんてな。
放火犯に啖呵を切って泣いているアイツを見た時
抱きしめたくなったんだ…
だが沖矢昴の姿でそんな事をしたら
美緒に警戒されて、嫌われてしまうかもしれない…
例え仮の姿でも、美緒に嫌われるのは耐え難い。
「俺は…美緒が大事なんだ。
ボウヤも時々でいいからあいつのことを気にかけてやってくれ。」
「うん…分かってる。」
話が終わったところで駐車場に着き
俺達は2人で車に乗って阿笠博士の家まで戻った。