第15章 空虚
『それじゃあみんなで開人くんの病院にお見舞いに行こっか!』
「「はーい!!」」
「米花総合病院ってちょっと遠いから
博士に車で連れてってもらおうぜ!」
「……博士?君達の知り合いに博士がいるのかい?」
私達の会話を聞いていた沖矢さんが
工学部で博士号を取った阿笠博士に会ってみたいと言い
一緒に阿笠邸へ向かうことになった。
子供達は私と沖矢さんの前を楽しそうに歩いていて
私は隣を歩いている沖矢さんに顔を向けた。
『あの…先程はありがとうございました。
ハンカチは今度洗ってお返しします。』
「いえ、気にしないで下さい。
それより開人くん、無事で良かったですね。」
本当にそう…
本当に生きてて良かった。
やっぱり命って…とても重くて尊いものだよね。
赤井さんも……生きてて欲しかったな…
「?どうかしました?」
『っ、いえ!何でもないです!』
いけないいけない。
また赤井さんのこと思い出しちゃってた…
無意識に彼の事を思い出しちゃうなんて…
私はだいぶ重症みたいだ。
小さいため息をこっそり吐いたところで
阿笠さんの自宅に到着し、みんなで一緒に家の中へとお邪魔した。
沖矢さんは家が火事になり
住む場所が無くなってしまったからと博士の家に住まわせて欲しいと依頼していたが、灰原さんが凄く嫌がっていたので
江戸川くんが隣にある工藤新一くんの家を使ってもいいよと提案していた。
「新一兄ちゃん、最近ずっと家に帰ってなくて
今は誰も住んでないから好きに使って!」
「立派な洋館だけど…本当にいいのかい?」
「うん!後で一応、新一兄ちゃんにも連絡しとくからさ!」
…工藤新一は君でしょ!?
っていうか、今日知り合ったばかりの人に家貸すなんて正気?
でも私はそんな事言えるはずもなく黙っているけど…
正体バレちゃったりしないのかな…?