第15章 空虚
『えっと…君は確か杉浦 開人くんだったよね?』
「うん!実はね、
明日みんなが僕の家のアパートに遊びに来るんだけど
先生も良かったら一緒に来ない?」
『え…?私も…?』
「うん!C組のクラスの子が言ってたけど
若山先生、最近少し元気がないって聞いたからさ!
ボクの部屋に置いてある物を見たらきっと元気になると思うよ!」
……嘘でしょ?子供の観察力って凄まじいな!
上手く隠せてる思ってたのに、教師として情けない…。
「若山先生、開人くんもこう言ってるし
気晴らしに来てみたら?」
江戸川くんは私に気を遣ってくれているのか
後押しするように誘ってくれた。
『うーん…まぁ明日は予定もなかったし…
せっかくだからお邪魔させて貰おうかな?』
「本当に!?やったぁ!
僕の家、米花町2丁目23番地の木馬荘ってアパートだから!
じゃあまた明日ねー!」
開人くんは自分の家の住所を告げるとみんなより一足先に帰って行った。
「じゃあ俺達も帰ろーぜ。」
『また明日ね、みんな。気をつけて帰るんだよ。』
「「「はーい!!!」」」
探偵団のみんなに手を振り、私は職員室に戻った。
…そういえば休みの日に出掛けるのなんて久しぶりかもしれない。
どこかに行く気すら起きなくて
最近はずっとゴロゴロしてるだけだったからなぁ。
誘ってくれた開人君や探偵団のみんなには感謝だな。
その後、職員室に戻ったわたしは
A組の担任の先生に明日開人くんの家にお邪魔することを一応伝えておき、いつものように事務仕事をしてから帰宅した。
そして夜のうちに手土産用に持って行くお菓子の仕込みをして
あまり遅くならないうちに眠りについた。
…久しぶりにお菓子を作ることに夢中で
今日はあまり赤井さんの事を思い出さず悲しくなることもなかった。
料理してると気が紛れるし、
やはり私は誰かのために何かを作るのが好きなんだなって実感した。