第15章 空虚
ある日、いつものように仕事を終えて帰る途中に
ジョディさんから電話があった。
「Hi、美緒。元気にしてる?」
『元気ですよ!ちょうど今から帰る所です。』
ジョディさんは、赤井さんが亡くなってからも時々こうやって電話をくれる。
私が落ち込んでいないか気にしてくれているようで
ジョディさんだって辛いはずなのに、仕事の合間に連絡をくれる彼女の優しさが身に染みる。
私達が話す内容は大した事ではなくて、
人気のカフェの話とか、私の仕事の話とか他愛無いもの。
でも誰かと話すだけで少しは気分が晴れるんだ。
…赤井さんの話が出る事はないからね。
ジョディさんと話をしながら歩き
アパートに到着してから電話を切った。
そしていつも通り部屋の中に入り電気をつけると、途端に襲ってくる空虚感。
心の中にぽっかりと穴が空いたような感覚。
そしてまた赤井さんのことを思い出して、気がつくと涙が頬をつたっている。
『……泣くな…私…』
自分にいつもそう言い聞かせているけど
頭の中には泣いている私を悲しそうに見つめる赤井さんがいる。
数週間経った今でも、鮮明に赤井さんの顔が思い浮かぶ。
忘れたいのに忘れたくない…
そんな葛藤を繰り返している毎日。
赤井さんがいない生活がこんなにも辛いなんて…
自分がどれほど赤井さんに惚れていたか
この数週間で嫌って言うほど思い知らされた。