第15章 空虚
赤井さんが亡くなった日から数週間過ぎたけど
私はいつも通りの日々を送っている。
いや…いつも通り見えるような、って言った方がいいかな。
社会人である以上
いつまでも落ち込んで仕事を休む訳にはいかないし
ずっと悲しみに明け暮れることも出来ない。
それに暗い顔をしていたら他の人に余計な心配をかけてしまうだけ。
私は顔に出やすいんだから、それだけはいつも気をつけている。
でも家に1人でいる時は
自分でも嫌になるくらい赤井さんのことを思い出してしまう。
私の作ったご飯を美味しいと言ってくれる赤井さん。
食後にベランダでタバコを吸っている赤井さん。
ソファーで横になって仮眠している赤井さん。
そして…私を抱いてくれた時の赤井さん。
この家には赤井さんとの思い出があり過ぎる…
でも例えどんなに悲しんでも、赤井さんが生き返るわけじゃない。
頭では分かってるはずなのに…
いつになったらこの暗い気持ちは晴れてくれるんだろう。