第14章 残酷 ✴︎
「…悪いな、美緒」
『っ、謝らないで下さい…何か事情があるんですよね?
私のことなんか気にしなくていいですから…
あ、コーヒー淹れてきますね!最後に飲んでいって下さい!』
「…ああ。」
そのままソファーで一緒に座っていることなんて出来なくて、私はコーヒーを淹れるためキッチンに向かった。
赤井さんに背を向けてお湯を沸かしている最中も
さっき言われた事が頭の中をぐるぐる回っていて…
油断するとすぐにでも涙が溢れ落ちそうだった。
…泣くな、私。
せめて1人になるまで我慢しないと…
泣いたりしたら赤井さんを困らせるだけ…
そう自分に言い聞かせて涙を堪えているけど
あともう一度瞬きをするだけで涙は溢れそうなくらいになってしまっていた。
「美緒」
『っ、赤井さんっ…座って待ってて下さいよ…』
私の様子がおかしいことに気づいたのか
赤井さんはいつの間にか私のいるキッチンに入ってきていた。
『すぐ入れますから…もう少し待ってて下さいね。』
「美緒…」
名前を呼ばれているけど
今赤井さんの方を向く訳にはいかない。
泣いているところを…見られたくない……
『…赤井さんはブラックでしたよね?』
お願いだから…こっちを見ないで……
「…美緒、っ…!」
赤井さんはずっと目を合わさない私の肩を掴み
体の向きを無理矢理変えてきた。
そしてすぐに私が泣いている事に気付き、驚いた顔をしていた。
「美緒…お前…」
『っ、だから…待ってて下さいって…言ったのに…』
一度溢れた涙は拭っても拭っても止まらなかった。
…嫌だ。
赤井さんともう会えなくなるなんて…
そんなの…嫌だよ…
でも私にはそんな事を言う資格なんて無い。
私達は……恋人でもなんでもないんだから…