第3章 1つ目のタカラ
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き「お姉ちゃん、おんぶして!」
かれこれ5年もしているこの野宿生活も身に染みてきた。さくらんぼが働いた僅かな賃金で飲み食いをし、硬い洞窟で寝泊まりをする。辛い生活だけど殺されるよりはましだと思い繋げて生きてきた。そう思わなくちゃいけないと考えてた
ある日、ジャージ姿で2人で出かけ、買い物帰りにきくおんぶをせがまれた。
「ごめんねきく、もう少しで家に着くから我慢して」
き「やだー!おんぶー!!!」
きくはまだ7歳。甘えるには十分な年齢だ。逆にきくには無理をさせていると言っても過言ではない。この苦しい生活でも最低限度はきくの願望やわがままを聞いているつもりだがさくらんぼはもっともっとゆとりのある生活を送らせてあげたかった
「仕方ないな…んしょっ」
き「んへへ」
「あ…………雪だ…この寒さじゃそろそろ降るかもって思ってたけど」
き「きゃー!
お姉ちゃん、雪捕まえる!」
「え、このまま?」
き「右!あーやっぱり左!もうちょい前!」
『疲れる…』
き「捕まえたー!あれ?」
「どう?」
き「んーん、逃げちゃった」
握ったきくの手の雪は既に小さな水滴と化してしまった
きくはそれを逃げてしまったと勘違いする
『雪は逃げたりしないよ…』
き「(ズズッ)さぶい…お腹すいた…」
「うん、じゃあ帰ろっか」
「きく、きく!」
き「ん…ふぁ…お姉ちゃん?」
「きく、逃げよう!」
「はぁはぁ、ここまで来れば大丈夫かな?」
き「お姉ちゃんもうお家帰ろうよ、もう朝になっちゃうよ!パパとママも心配するよ!」
「きく、ごめんね。
今から大事な話するから落ち着いて聞ける?」
き「んー…」
私達もうお家には帰れない
き「え、…………なんで………」