第5章 海いこうぜ![5]
龍之介の胸に寄りかかり、うりうりと額を擦り付けながら抱き着いていた。
「…可愛い…そんな可愛いのに抱っこ出来ないの?うう、可愛い…」
「可愛いのはそうだけど、がそこまで眠くなるの珍しいじゃない」
「熱でもあんじゃねぇのか?」
天と楽の言葉に、龍之介はの額にそっと触れ体温を確かめてみるが、別段いつもと変わりはないように見える。
「うーん、熱はない…確かにちょっと夜更かしはしたけど、それもいつも通りと言えばいつも通りだし。あ、お腹空いてる?」
「うんー…お腹空いたぁ」
の返答に龍之介は納得と言ったように頷く。
「、お腹空くと眠くなるときあるもんね。となると、やっぱり抱っこ」
「抱っこ好きだけど、恥ずかしいもん」
「でもきっといつもの低血糖だよ。ほら、転んじゃう前に抱っこ」
「…あい」
龍之介の心配そうな表情と声音に、は一度考えた後小さく頷き両手を龍之介に向かって伸ばした。
まるで幼子の様な返答とその動きに、龍之介の頬は緩み切り、天は片手で顔面を覆い、楽はにやける顔を抑えるために天を仰いだ。
可愛すぎる…っ
そんな声が全員の脳内から漏れ出ていそうである。
「ん、おいで」
を横抱きに抱き上げ、龍之介はそっと額に口付ける。
「寝てていいからね」
「やだぁ。龍くんのほっぺちゅーする」
頼むからもうやめて可愛すぎる
でれでれが過ぎる龍之介の頬に口付け、はそのまま龍之介の頬に掌を当てる。
うりうりと龍之介の頬を捏ねながらにこりと微笑めば、再度頬に口付けた。
「今、心の底から龍が羨ましい…」
「…不本意ながら完全に同意。おい龍、代われ」
「楽には悪いけど、これは譲れない」
「じゃあ僕には譲ってくれる?」
「ごめん、天…俺には天も可愛いけど、だけは渡せない」
言葉だけはシリアスながら、その表情はほんわかとしている龍之介。
しかし断る目つきはかなりの真剣さを醸し出していた。
絶対に何を言ってもこの美味し過ぎる状況を譲る気は無いらしい。
幸いまだ早朝。
他のメンバーやスタッフ、一般客に見られることなく、一同は部屋の前へとついた。
「朝食も撮影入るよね」
「だな。朝食用のって衣装渡されてるしな」