第1章 海行こうぜ![1]
「うっお…」
「やっべぇ…」
「かっ、かわ…か…可愛い…!」
「龍、落ち着け。可愛いのは分かってるから」
「楽もね」
「りゅーくーんっ」
そんな!笑顔で!走って!こないで!!
眩い笑顔で駆け寄ってくるをときめき由来の動悸が激しい中なんとか抱きとめ、龍之介はそっと抱きしめる。
「可愛すぎ」
「ふふ、大好き。…水着いいわぁ」
「ん?」
「龍くんとピタってできるからっ」
素肌同士のふれあいが嬉しいのだ。そう言いたいのだろうが、如何せんこの場には健全な男性が10数人。
スタッフを含めれば大多数の男性陣。
ほぼ全員被弾。
頭を抱え、顔を覆い、口元を押さえ、胸を押さえ、天を仰ぎ、その場に蹲るものまで出る始末。
「今日の撮影、大丈夫かなぁ…」
「というか、ちゃんは十さんとあんなにいちゃついて大丈夫なんですか…?」
「ユキくんモモくん始め、彼らは知ってるから良いですけど、スタッフさんたちはねぇ…」
「でも龍もも止めてもああなんだから…」
うんざりに近いような表情で呟くのはTRIGGERマネージャーの姉鷺。
うんざりというよりは、諦めの境地に達しているような気もする。
「本当に、お疲れ様です。姉鷺さん」
「ありがと。さて…今回も釘刺しに行くわよ、大神くん」
「はい!」
ずんずんと砂浜を進む万理と姉鷺の姿に気付いたと龍之介。
2人が近づいてくる前に抱き合っていた体を離し、ビッと揃って敬礼。
「いちゃつきません!!!」
「甘やかしすぎません!!!」
「分かってるなら最初からいちゃつくんじゃないわよ!」
ごもっともである。
それでも2人の宣誓を受け取り、姉鷺と万理はこくりと深く頷く。
「無駄でしょうけどね」
「間違いなく」
あの2人が仕事であれプライベートであれイチャつかなかったことなどない。
世間的には未だ両片思いと言いつつもう完全に両思いなんでしょ?という認識なのだが、だからと言っておいそれと熱愛報道を出すわけにもいかないらしい。
とはいえ、いざ熱愛報道が出たところで、やっぱりね、と頷かれスクープにもならないだろうことは明白。
それほどまでに、今や2人は世間公認のカップルなのだ。
「そろそろ撮影始めまーす!オープニング撮影から。皆さんスタンバイお願いしまーす!」
「はーい!」