第3章 再会。
4)
蒼斗…あおと……あお……
「っ……あ…っ」
脳内にいつかの記憶がよみがえる。
『あお』こと高山蒼斗(たかやまあおと)。
あおは、俺が小学校高学年の頃よく遊んでいた公園で知り合ったんだっけ。
転んで血がにじんでいたひざ小僧に、たまたま母親が俺に持たせてくれていた絆創膏をはってあげて。
それがきっかけで懐いちゃって、公園で会うたび『朔ちゃん朔ちゃん』と何かと俺の後ろをついて回っていたんだよな。
あの頃あおはまだ4歳くらいだったか…
中学生になってからその公園に行くことが少なくなって、疎遠になっちゃったけど。
「あ、あの『あお』か!?ふふっ、懐かしいな…あんなにちっちゃかったのに、ずいぶんと大きくなって…」
「はあ?そりゃ大きくなるよ、俺高3だし…てか朔ちゃんは歳取ったね」
「な、まだ25だっての」
「……吉野先生……?」
懐かしい顔につい羽目をはずしかけて(断じてはずしてはいない)、クラス担任に注意されるし他の生徒たちもクスクス笑っているし。
「あ、すみません。えっと、○△先生が復帰されるまで数学とこのクラスの副担任も兼任するので、改めてよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げて教壇から離れた。
あおを見やればニヤニヤと微笑(わら)っていて、その口が『ばーか』と動く。
ったく、誰のせいだよ。
小生意気になりやがって…
まあでも入院中の先生が帰ってくるまでだ。
予定では一ヶ月くらいって言ってたし、波風立てずにやり過ごさなきゃ。
そう思って俺はあおから目を逸らす。
予定外に始まった臨時教員の仕事。
平穏無事に日々を過ごすはずだったのに……