第3章 再会。
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「お疲れ様でした」
ようやく初日が終わる。
とりあえず無難に一日を過ごした俺は、個人的に懐かしい母校の思い出の場所に足を運んでから帰ることにした。
階段を上がって『立ち入り禁止』と書かれたドアをそっと開ける。
「教員の特権だな。堂々と入ることができる」
足を踏み入れたのは屋上。
「うわ…眩し…っ」
9月の太陽はまだ高く、眩しさと熱さに俺は目を細める。
俺は屋上の柵に近寄って手をかけると、その先に目を向けた。
「……あ、見える…っ」
そこには夕日に反射してキラキラ輝く海が遠くに見えて。
その景色が好きだった俺は、学生の頃よく屋上に忍び込んでいた。
卒業して周りにたくさんビルやマンションが建って昔見えていた景色とは変わったけど、その海が変わらず見えたことが嬉しくて俺は少し身体を乗り出した。
「懐かしいな……う、わぁっ」
突然強い力に腕を引かれ、屋上に背中側から倒れ込む。
「っ、たたっ、な、何…っ」
転げた反動で打ち付けた左肘をさすりながら上半身を起こした。
「さっ、朔ちゃんっ、何してんだよっ」
「あ、あお?」
そこには、俺を引っ張って一緒に転がり、同じように身体を起こして心配事そうにこっちを見つめているあおの姿があった。
ああ、コイツのせいで転んだのか…って、『何してんの』はこっちのセリフだと思うんだが…