第3章 再会。
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──9月。
県外の大学に通い高校の数字教師になった俺は、そのまそこで就職していた学校を辞めて地元に戻ってきていた。
しばらくゆっくりするつもりだったが、母校が数学の臨時教員を探していると聞いた母親が『家でダラダラする時間があるなら少しでも人様の役に立て』と、半ば強引に臨時教員の話を受けることになってしまった。
ったく、少しは戻ってきた息子を労れっての。
まあ…臨時なら、って安易に受けた俺も俺だけど…
今日はその臨時教員としての初日。
クラス担任に続いて入った教室は見知らぬ人物(俺)にざわつき出す。
そんな中、窓際の席で気怠そうに頬杖をついて外を眺め、こっちなんかに全く興味ない態度の男子生徒が一人。
無関心っていうか、無気力っていうか…そんなヤツはどこのクラスにも居るよな…
こういうヤツにはあんまり関わらないようにしておこう。
俺は臨時教員の期間を無難に過ごしたいんだ。
「おはようございます。ケガをして入院された○△先生の変わりに2学期から数学を担当します、吉野 朔(よしのさく)です。少しの間ですがよろしくお願……」
「……っ、朔ちゃ…ん?」
は?誰だ、俺のことをちゃん呼ばわりするやつは…
声のした方を見やると、そこにはさっきの無関心な男子生徒が俺を見て驚いた表情(かお)を浮かべている。
「……?」
お、意外とイケメン……って、誰だろう。
どこかで会った…かな?
「蒼斗だよ、あお!」
きょとんとしていた俺にそいつはそう名乗った。
蒼斗…あおと……あお……
俺は自分の中の記憶を必死にたどる。