第7章 もやもやするこの気持ち。
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「朔ちゃん、絶対見に来てよ?俺、朔ちゃんのために歌うから」
「重っ。まあ時間が合えばちゃんと見に行くよ……って、歌うっておまえボーカル!??」
「あおくんはうちのバンドのカリスマギターボーカルなんですよ」
臨時教員として母校で久しぶりに会ったあおは、学校なんて…って感じでつまんなそうに見えたのに、まさかあおがそんなエンターテイナーだとは思ってもみなかった。
「そうなんだ。ますます楽しみだな」
「朔ちゃん俺に惚れ直すよ、絶対」
「ばっ、まだ惚れてないわ」
「まだってことは、この先可能性アリってことだよね」
「う、うるさいっ」
「ふふ、やっぱり二人は仲良しですね」
遠野真白に完全に勘違いされている気がする。
ジロリと見やったあおはニヤリと口角を上げる。
くっそ~っ、なんか腹立つなあ。
「あおくん、そうと決まればライブまでそんなに日にちがないから練習練習。早く感覚取り戻してもらわなきゃね。吉野先生、あおくんお借りします」
それを聞いて今度は俺がニヤリとする。
「おう遠野くん、あおにみっちり練習させてやってくれ」
「えっ、ちょっと待っ、ましろっ、さ、朔ちゃあんっ」
遠野真白に手を引かれて連行されるあおが俺に向けて手を伸ばす。
俺はそんなあおに笑顔でひらひらと手を振ってやった。
せっかくライブをやるなら後悔しないように、自分が納得できるステージにして欲しい。
それに…ライブをやってるあおはカッコいいだろう。
「ふふ、楽しみだな」
こんなに胸が踊る気持ちは久しぶりな感覚だった。