第7章 もやもやするこの気持ち。
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「いやちょっと待て、う、ウワサって」
俺は平穏無事に臨時教員を終えたいだけなのに、ウワサってなんだよ。
「あおくん、ね、お願い」
慌てる俺を他所に、遠野真白はあおの手を取って強請(ねだ)っている。
「え、ダルいからやだよ……あーでも朔ちゃんがいいって言うなら」
あおがチラリと俺を見やった。
「い、いいもなにも…俺が決めるわけにいかないだろ」
「じゃあ…朔ちゃんは俺がライブやってるの見たい?」
…それはちょっと見たいかも。
俺は小さくうなずいた。
「わかった、朔ちゃんがそんなに言うなら仕方ないなぁ♪ましろ、最後の学祭盛り上げるか」
俺のせいで仕方なくあおがライブに参加するみたいになっているはどういうことだよ。
「ちょ、おまえなんで俺のせいみたいに…」
「っ、ホント!?嬉しい!ありがとうあおくん、吉野先生!」
俺の言葉を遮って遠野真白があおに抱きついて喜んでいる。
そのスキンシップ多めな光景に、なんだか胸がもやもやするような…気もする。
いやそんなことより、ステージに立ってるあおも見たいし、最後の学祭で楽しい思い出も作って欲しいと思っているのは確かだから、あおがやる気になったのは良いことだ。
生徒たちの自主性を尊重し、育てていくのも一教師としての勤めだからな。
「あお、遠野くん、ライブ楽しみにしてるよ」