第7章 もやもやするこの気持ち。
26)
「あおくんっ」
その男子生徒はパタパタと俺たちの元へ走って来る。
俺は慌ててあおから身体を離した。
「あれ、ましろ、どうした?」
『ましろ』と呼ばれたその子はあおの側に寄ってくると、腕を取ってぎゅっとしがみつく。
「あおくん、お願いがあるんだけど…」
あおの腕にしがみついたままあざとく目線を上げて。
「最後の学祭、一緒にライブに出てくれない?」
そういえば学祭で生徒達によるライブも開催されるんだったな。
それに一緒に行こうってことか…
…この子、あおのこと好きなのかも知れないな。
「お、あお、いいじゃん、一緒にライブ行ってやれよ」
そう言いながら、自分の胸が少しチクチクするのはなぜなんだろう…
「やだよ、俺は学祭は朔ちゃんを連れ回すし」
「連れ回すっておまえ…」
「それに、こいつは一緒に行こうって言ってるんじゃなくて、『出て』って言ってんの」
行こうじゃなくて出て……?
「っ、おまえバンドなんてやってんの!?」
「そんな驚かなくてもwそれに正確に言えば『やってた』かな。で、その時のメンバーのひとりがこいつ、ましろってわけ」
あおにしがみついていたその子は身体を起こして姿勢を正し、俺を見てニッコリと微笑う。
「3年○組の遠野真白(とおのましろ)です。ウワサの吉野先生♪」
授業は何度かしているけれど、まだ担当クラス全部の生徒の名前と顔を把握していないからなぁ…